所長のコラム

不利益変更

非正規社員に正社員と不合理な待遇差をつけることを禁じた「同一労働同一賃金」法制に合わせ、非正規社員の待遇を改善するのではなく、正社員の待遇を改悪することにより、労使の争いに発展している事例が増えている、との報道がありました。事業を続けていく上では、賃金に限らず、従業員の労働条件を見直す必要性が生じることは多々あるでしょうし、どうしても労働条件をそれまでよりも(従業員にとって)不利益に変更しなくてはならないこともあり得ることです。しかしながら現在の日本の雇用環境において、従業員の労働条件を不利益に変更することは非常に難しいこともまた事実です。

労働契約法第7条には次のような定めがあります。「…使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。…」
したがって労働契約を変更する場合には就業規則を変更することによって行うことになるわけですが、同法第9条には次のような定めもあります。「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。…」
つまり、従業員の労働条件を不利益に変更するには、労働者の合意がなくてはならないということです。労働条件の(不利益)変更の合理性の有無については、過去の判例では次のような考え方が示されています。
①就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度
②使用者側の変更の必要性の内容・程度
③変更後の就業規則の内容自体の相当性
④代償措置その他 関連する他の労働条件の改善状況
⑤労働組合等との交渉の経緯
⑥他の労働組合又は他の従業員の対応
⑦同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである。
(厚生労働省パンフレット「労働契約法のポイント」より)

このように、従業員の労働条件2021を変更するためには慎重にステップを踏む必要があるのです。

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