今月(10月)は、非正規社員と正社員の待遇格差に関する訴訟の最高裁判決が相次いで出されました。
中でも非常にインパクトがあったのは、大阪医科大学の元アルバイト職員と、東京メトロ子会社メトロコマースの元契約社員が、それぞれ賞与と退職金の不支給は不合理として是正を求めた訴訟で、最高裁は両方とも、「不支給が不合理とまではいえない」(格差は不合理とは認定せず)と言い渡しました。
正直なところ、この判決には非常に驚きました。昨今の世の中の、「均等待遇・均衡待遇」の流れにおいて、最高裁でも当然に「格差は不合理である。」との判断が下されると思い込んでいました。
原告側も寝耳に水という思い出あったことは想像に難くありませんし、実際に専門家の間でも評価は大きく割れていました。
これらとは逆に、日本郵便の正社員と契約社員の手当や休暇の差の是非が争われた訴訟では、最高裁は扶養手当や夏期冬期休暇などが契約社員に与えられないことが「不合理な格差にあたると」判断しました。
さて、判例を見るときは、判決(結論)ではなく、過程に注視すべきとよく言われますが、今回の一連の最高裁判決から、「賞与と退職金は非正規社員には払わなくてもいいけれど、扶養手当は払わなくてはいけない。」という風に考えてはいけません。
大切なのは、「支給する」、あるいは「支給しない」の是非ではなく、「支給する」、あるいは「支給しない」ことに関して、合理的で客観的な理由があるかどうかということです。